画像のレンズは 新旧のニッコール24ミリf2.8、左が新タイプ、右が旧タイプ。光学系が異なっています。
この右のニッコールオート24ミリf2.8(Ai改造品)には「ニコンレンズ史上初の機構」が組み込まれています。それが「近距離補正」といわれるメカニズムです。勿論第2世代にも組み込まれています。
現在ではレンズにいろいろなメカニズムが組み込まれていますが、このレンズが登場した頃はレンズは基本的に「全群繰り出し」によって近距離の被写体にピントを合わせていました(現在でもこの方式のレンズは多数存在します)。
ニコンの光学設計部門には生真面目な人が多かったのでしょうね。「レンズ全群を繰り出すと、特にレトロフォーカスタイプの光学レンズでは描写性能が低下することがある、それを防ぎたい」と新しいメカニズムを組み込むことを考えたそうです。詳しい説明はなされていませんが、特定のレンズの面間隔を繰り出しに応じて調整する機構を盛り込んだそうです。
で それはどのくらい効果があるのか?...が今回のお題です。そのチェックはニコンの一眼レフを用いては実施できません。そこでソニーα7とヘリコイド内蔵マウントアダプターが登場します。
簡単なやり方でチェックしてみます
(a) ソニーα7+マウントアダプターに24ミリレンズを装着し、まずレンズのヘリコイドを繰り出して 近距離の被写体にピントを合わせて撮影する・・・近距離補正方式が働く
(b) 次に レンズヘリコイドを無限遠に合わせ、マウントアダプター内蔵のヘリコイドを繰り出して、同じ被写体にピントを合わせて撮影・・・近距離補正方式が働かない
(a)と(b)の画像を比較すれば、近距離補正機構の貢献度を素人でも目視で判定出来ます。このレンズの最短撮影距離30cmでチェックしてみます。
まずサンプルとなる被写体を用意します。味も素っ気もないですが PCのディスプレーを使って用意しました、

この画面は 新型24ミリf2.8の絞り開放での画面です。(初代の24ミリでもチェックしたかったのですが、残念ながらマウントアダプターに絞り環がつかえて装着できませんでした)。
画面中心でピントを合わせます。中心部に少し色被りがありますが原因不明です、無視してください。少し樽型歪曲がありますね、まあ当時の設計水準としては悪くない方だと思います(最近のズームレンズの広角端の歪曲の方が遙かに酷い)。
まずレンズのヘリコイドでピントを合わせ、絞り開放f2.8と f8 で撮影します。つまり
近距離補正方式が働いているケースです。
(1) f2.8中心部
(2) f2.8 周辺部 左上角
(3) f2.8 周辺部 右上角
左下角と右下角は割愛します。
続いて f8で同様に撮影しました。
(4) f8 中心部
(5) f8 周辺部 左上角
(6) f8 周辺部 右上角
中心部と周辺部では描写力に差がありますが、それでも四隅でも一応画面に表示された文字を視認することができます。
さて それでは
近距離補正方式が働かない場合(→つまりマウントアダプター内蔵のヘリコイドで近接撮影をした場合)は どうなるか?
(7) f2.8での中心部

これはそれほど描写力の劣化はありませんでした。つまり中心部の描写に関しては、近距離補正方式の貢献度はあまり認められません。
(8) f2.8での周辺部 左上角
(9) f2.8での周辺部 右上角
上記画像からは近距離補正方式を採らなかった場合周辺部の描写の大幅な劣化が見て取れます。
f8での結果も検証してみます、
(10) f8での中心部
(11) f8での周辺部 左上角
(12) f8での周辺部 右上角
f8に絞れば全体に収差がおさまり、近距離補正方式を採らなくても良好な描写が...との期待も虚しく、やはり
近距離補正方式の効果は絶大なものがあると確認する結果になりました。
同時代のキヤノン、ミノルタ、ペンタックスなどの広角レンズは近接撮影時どのような描写力を示したのでしょうね? ちょっと興味が湧いてきます。